【片岡編集長のレポート⑨】Buy Time(時間を奪う)ということを軸に考える、オールコートマンツーマンDFについて
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前回のメルマガでは、ボール運びの中でのDFの中でのOn Ball Screenへの対応について、『Buy Time(時間を奪う)』という考え方を中心に紹介しました。
今回は、日本対オーストラリア戦の中、オーストラリアが日本に仕掛けてきたフルコートのマンツーマンDFも、まさに『Buy Time(時間を奪う)』を主眼としたシステムであるのではないかというのが本稿筆者の分析です。
オーストラリアのフルコートDFのシステムの1部をご紹介する事で、フルコートDFの精度を高め、一つでも多くのポゼッションを優位に進めたいと思うコーチの方の参考になれば幸いです。
◇ボール運びに対してスクリーン(または、邪魔になるように意図的に走ってくる)ケースにおけるフルコートDFの戦略
・ファジーカス選手は、富樫選手のDF(X1)に対して邪魔をするようなコースを意識的にゆっくりと歩き、富樫選手のボール運びをサポートします。
・普通のチームの場合は、X5の選手も一緒に下がっていくのですが、オーストラリアの場合は、ボールマンへ圧力を与えるチャンスと捉えます。
決して、ボールを奪うようなShowDeffenceではありませんが、ドリブルでの侵入を防ぎます。
・X5選手のDFに反応し、富樫選手も方向をチェンジ。サイドライン方向からのボール運びを選択します。
※ここで気になるのが、ファジーカス選手へのパスコース(黄色いサークルのエリア)となります。
ここについては、X5がダッシュで戻る準備、及び、ウィングの選手がスペースを埋める準備をしています。
・元々のマークマン、及び、上背のあるX5に、絶妙な間合いで囲まれた形となった富樫選手。ファジーカス選手へのパスを選択します。
・ここで、X3とX5の選手のアイコンタクトや、事前の練習が存在していたはずです。この場面では、X5の選手が脚力を活かして、ファジーカス選手へのマークへと戻ります。
同時に、X3 の選手は自分のマークへとスプリントで戻りました。
※この場面、X4の選手とX3の選手とでも、マークマンの受け渡しについてのコミュニケーションが存在していたはずです。
・その後、X5はファジーカス選手のドリブルコースへと回り込み、スムーズな侵入を防ぎます。
ハーフコートのオフェンスを開始したい日本は、3(田中大貴)選手がハンドオフでボールをレシーブしに走り込みます。
※この時点で、ショットクロックは残り12秒ほど。
8秒以内でハーフコートに入るだけではなく、ファジーカス選手にドリブルで侵入させることで、ハーフラインから3P周辺のエリアまでのスペースでも時間を奪う事に成功しました。
<まとめ>
フルコートディフェンスについて「時間を奪う(buy time)」という視点で見ると、様々な場面でのリスクマネジメントや優先順位を明確にすることが欠かせません。
例えば、「富樫選手がドリブルチェンジをし、X5とX1で絶妙な間合いでのダブルチーム+X3の選手がファジーカスへのパススペースをケア」という、最初のローテーション発生の場面では、富樫選手から3番の選手へ鋭いワンハンドパスを通された場合、このディフェンスは崩壊します。
ですが、富樫選手とマークマン選手の身長差もありますが、それ以上に、この絶妙な間合いでは、鋭いパスを通すのはなかなか難しいように思います。
出せたとしてもロブパスになり、そうであれば、X3、X4などでのローテーションも十分に可能。
イージーバスケットを許さないような仕組みになっています。
勿論、PF/Cの選手でも機動力やDFの脚力をチームの強みとしている事や、咄嗟の状況に対してコミュニケーションを図って状況判断が出来る事が前提とはなりますが、ボールマンに対してスクリーン(または歩きながらの邪魔)をしてくるケースでのローテーションの一例になれば幸いです。
※別のケースでも、210cmオーバーのソン・メイカー選手も、前線でのディフェンスや、スペースを埋める走りの脚力を見せており、オーストラリア代表チームの選手選考の理念や、脚力に対する高い意識が読み取れます。
次回は、八村選手がボール運びに関わった場面でのオーストラリア代表のローテーションについて説明を試みます。宜しくお願いします!
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