【片岡編集長のレポート④】ドライブインからの「状況判断」について

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前回までのメルマガでは、U16代表チームや、B.LEAGUEのプレーより、ドライブからの状況判断についての解説を試みました。

今回は、2016年リオ五輪の男子準決勝、セルビア対オーストラリア戦にて、セルビア代表のSGボグダン・ボグダノビッチ(Bogdan Bogdanović)がドライブインの際に見せた素晴らしいプレーを紹介するとともに、その状況判断の過程を解析する事を試みます。

ボグダン・ボグダノビッチはセルビアの名門KKパルチザンを経て、ユーロリーグの強豪チームであるフェネルバフチェでプレー。

2017-18年シーズンよりNBAサクラメントキングスに加入、平均27.9分11.8得点2.9リバウンド3.3アシストをマーク、NBAの舞台でも活躍をしている欧州選手の1人です。

連続写真、及び、コート図を通じて解説を加えていきます。

ボグダン・ボグダノビッチの状況判断

リオ五輪、セルビア対オーストラリア戦。

・2番の選手がボグダン・ボグダノビッチ。本稿の主人公です。

・PGの選手がウィングにボールをパスする形でエントリーをしました。

・トップに移動するセンターにボールを預け、2番へダウンスクリーンをセット。

・そのまま、2番と5番とでハンドオフを試みます。

 

・しかし、最初のハンドオフでは、4番の選手とのスペースの関係上、ドライブをするチャンスがありませんでした。

2番の選手も、それを判断し、一度ドリブルで下がります。

・スペースを変え、反対サイドへのピック&ロールを指示します。

(4番はコーナーへ、1番の選手は反対サイドへと流れてスペースを広く取りました)

※黄色、赤のサークルで各DEF選手が守れる領域を表現しています。

 

・2回目のピック&ロールに成功し、ペイントエリアへと侵入します。スクリナーのディフェンス(X5)は、後ろに引きながら2番との間合いを図っています。

・この場面で注目すべきは、2番のドリブルのコースです。真っすぐにリングへと向かうのではなく、一度、X2の選手を背負うようなプレーを選択しました。

※紫色のサークルで表現しています。

・その隙に、スクリナーの5番はリング方向へとDIVEを試みます。

・2番の狙いは、リングを守るX5に対して、ドリブルをする自分自身を守るのか、Diveをする5番を守るかの2者択一を迫ったのではないかと推察されます。

X2を背負うようなマイナス方向のドリブルをしてスペースを確保する事で、局地的な数的優位を確保する事に成功しました。

 

・その後も、目線、リズムを変えるドリブルでファイクを織り交ぜ、リズムを変えるステップを駆使し、最後はノーマークでのゴール下ショットを成功させました。(左図)

・仮に、揺さぶりながらドリブルをしている際、X5がボールマンを優先的に止めに来れば、ゴール下へパス(dish pass)をしたのではないかと思われます。

 

続きまして、仮に、ボグダン・ボグダノビッチがペイントエリアに対して真っすぐドライブをした際に、どのようなケースが考えられるのかを分析し、「悪いケース」として私の予想展開図を紹介します。

 

<悪いケース>

・ピック&ロール成功後、リングへとアタックする場面が上図左図になります。ピック&ロールで足止めを喰らったX2の選手も、後追いでペイントエリアへと戻りオフェンスの選択肢を潰すためにリカバリーをします。

・また、ドリブルのままでリングへ向かった場合、X5の選手が侵入やイージーシュートを防ぐべく、ディフェンス側の駆け引きをしてきます。上図右図では、黄色のサークルでX5がディフェンス出来る領域を示しています。

・このケースで良くないのは、2番もイージーシュートにも持ち込めない、5番の選手にも良い状況でパスを出す事が出来ない。1人のディフェンスで2人のオフェンスを守られてしまう状況です。

※また、後追いでペイントエリアへと戻るX2の選手のスティール(ドリブルのスティール、5番へのパスカットなど)のリスクも考えられます。

 

 

<まとめ>

バスケットボールのセットプレーなどの最終的な目的は、「より確率の高いショートシチュエーションに持ち込むこと」であることは、多くの方に納得していただけるのではないかと思います。

その為の有効的な手段として、ペイントエリアへの侵入が手段として存在します。

ピック&ロールであっても、クローズアウトに対するカウンタードライブであっても、ゴール下へ攻め込む際には、一直線で攻め込むのではなく、最終的にゴール下への数的優位を作り出すべく、リングへアタックする前のプロセスにおける様々な工夫が必要であると考えています。

※アルバルク東京のHCを務め、現在はサポートコーチ 兼 通訳伊藤拓摩氏は、アルバルク東京のACを務めている際、「no automatic 1.2 step」(ドライブインをする際に、日本人の選手は直ぐに1.2ステップを踏んでプレーの選択肢を狭めてしまう)として、キャッチーなキーワードと共に、ペイントエリアでの状況判断の重要性を選手に伝達していたようです。

以上、今週のレポートとなります。

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