【梅原トレーナーのからだづくり哲学】先を生きる者の心得
スキルアップ メンタル（心） 指導法 梅原 淳 練習法 育成法
私は教育現場とくに高校スポーツの現場に多く関わっており、仕事では学校の先生たちとの付き合いが大半となっている。今は仕事が我が人生ともなっているから、私の中心的な交友関係だとも言える。
この方々は仕事の上では顧客であるが、いつもその垣根を越えて人と人として話をする。むしろ事務的な中身ではほとんど話さない。
公私混同とか馴れ合いということではなく、干渉するとか礼を欠くという意味でも勿論ない。互いに思考をぶつけ合っていまの自分たちの生き方について、真っ向真剣に議論するのだ。
その交流は時と場所を選ばない。部活練習中の体育館やグラウンドは勿論のこと、あるときは体育教官室や応接室で、あるときは昼食を食べながら議論を交わす。送迎してもらう数十分の車の中で深まっていくこともある。
そのときにはやはり頻繁に、子どもたちや教育についての話題になる。
私が尊敬する方々は、部活動での勝ち負けや成功よりも、まず教師として子供の教育に悩まれていてまた真剣に思考されている。少なくとも私の周囲には男女問わずそのような指導者が多い。
預かっている子供を学校という環境でどう育てるか。日中の親代わりとして、責任をもって導かなくてはならないという決意が伺える。だから私にはスポーツチームのコーチというよりも、やはり「学校の先生」に見えるのだ。
そんな教師たちと話す時間と空間が、私にとっても貴重で有意義な時間である。教育者として子供のしつけや社会教育を重んじて取り組んでおられる先生たちとの対話は、私の仕事にも大きな実りとなっている。
教育というものはスポーツ競技においても、技術向上や成績に大きく影響を与えていく。物事のすべては人間成長が根幹にあるからだ。
それを知っているからこそ、教育者は単なる点数取りに走ることを決してしない。成績を取ることは教育の核心ではないということを、私の議論仲間の先生たちはよくご存じなのだ。
同じ教師でも反対に勝ち負けの話ばかりする人は、耳ざわりの悪い中身が多い。
このあいだ強豪のどこそこチームと仲良くなったとか、試合をしてコネができたとか、あの選手の進学にはいくらの金が動いている、○県の中学にすごく良いシューターがいる、そんな話題が目立つ。
自分にとっていかに都合が良いか、自分たちにどれだけ有利か、そのようなことは客観的に申して卑しい物欲である。人には必ず良き面と悪き面が混在しているが、そうは言ってもコネ、人材、お金、自慢のオンパレードにはうんざりする。
誠に申し訳ないが、パチンコや競馬に依存するギャンブラーのような雰囲気すら感じてしまう。勝敗や点数だけで物事を評価している人は、教師としての道を誤るだろう。
学校の先生であって教育者ではない人も、部活動の世界にはそう少なくないのだが、私はやはり生徒をどう導こうかどう正していこうかどうやって目標を持たせていこうかと考えている真っ当な教育者と繋がっていきたいと思う。
これが教師として、いや誰であっても先を生きる大人として、ごく当たり前の責任と役割だと心得たい。
私も単なる技術者であってはいけない。部活動を部活動の視点でしか見ない人は、人を育てることはできないだろう。単なる娯楽やショービジネスのスポーツイベントではない、一つの道を究める武芸として部活動は存在している。
教育の場に関わるからにはどんな人間も、その根幹を忘れてはいけない。学ぶための部活動を皆でつくろう。
（了）
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