【梅原トレーナーのからだづくり哲学】トレーニングレポートNo.1「3代目でようやく手にできた強化への足掛かり」

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見えざる本質的な成果を実感

6月18日、東京の私立高校・男子バスケットボール部にて、新チーム最初のトレーニングを行いました。そこで見た子供たちの成長の軌跡を今回はお伝えします。

今年の新チームは、入りの雰囲気と行動が昨年とは違っていました。前日にインターハイ予選で敗れ、3年生は引退、この日から2年生と新入生による新チーム始動となりました。

負けたすぐ翌日は正直言って気乗りしないかもしれません。悔しさもあるでしょう。しかし負けたからこそのんびりしていられません。

とくにまだ若いチームでは尚のことです。

私が体育館に行くと、前日の疲れや気持ちの落ち込みは微塵も見せず、ウォーム・アップから精力的に取り組んでいました。

狭い体育館の更に半分のスペースに23名、張りのある声が響いています。

昨年のスタートは指示を出されるまで何もせず、グズグズだらだらと気を抜いていました。今年は一転、エネルギーが漲っています。

これはひとえに、彼らの積み上げの賜物です。コツコツと毎日の修養を重ねてきた実りが、選手たちを輝かせてくれています。

トレーニングの様子を見ていても、あきらかに変化がうかがえます。監督とは「昨年と出来具合が大きく違いますね」と話しました。二人とも同じ見方です。それは2年生のことではなく、新入生を見ていての印象でした。

もちろん2年生も昨年と比べればたくましくなっているのが十分に確認できます。しかしそれは当然の結果であって、驚きは入学したばかりの新入生が高いレベルで2年生について行っていることにありました。

▽2年生がどれだけやれるかで決まる

これは今年の新入生の運動能力が高いという話ではありません。体力づくりは、各人が必死に頑張らなければ乗り越えられない心身の鍛練です。

つまり自分の体を追い込もうとする頑張りがどれだけ高いレベルにあるかに、トレーニングの本質があります。だからバスケットボールが上手いとか下手ということは関係ありません。身体能力の高い低いも別問題です。

そうなると困難を幾度となく経験し、それに打ち勝ってきた実績がものを言います。時間をかけてコツコツとそれをこしらえてきたことが、このような全体の底上げという二次的効果を生みました。

2年生が逞しい運動量と活気ある空気感でトレーニングしていることで、新入生の出来も自ずと良くなります。

不思議と“馴染む”と言うか、こういうものは全体が5のレベルであれば個はそれに沿い、10であればそれに沿って動くのです。

先輩がだらしなく情けない様子を見せたら新入生もそんなトレーニングをするし、今回のように精力的な様子を見せれば、後輩もそれに負けじとついて行こうとするんですね。

そういうところでチームは良くもなり得るし悪くもなり得る。エネルギー次第で如何様にもなっていきます。

▽「能力あるな」は典型的見誤り

あなたは新入生について、入部したばかりだから初めは上手くいかなくても仕方ないとか、それでも構わないなんて思っているでしょうか。

せっかく一年掛けてチームを育ててきたのに、また振り出しに戻ってゼロからやり直すのですか?それをまた来年も再来年も新入生が入るたびに繰り返して、永遠に同じレベルを行ったり来たりするつもりですか。

そんなチームはいつまでも強くなりません。

たとえ初めての人間が入ってきても、スタートラインを高くすることでチームは永続的にレベルアップしていくことができます。

あなたの周囲を見渡してみてください。毎年メンバーが入れ替わってもゼロスタートの人間が入ってきても、年々と力を上乗せさせていくチームがあります。

それはどうしてでしょうか。能力の高い選手が入ってくるから? 選手の才能によってチームの戦力は決まる?

もしそう思っているとしたら、絶対的にチームを育てる力が足りません。

優秀選手がいるから良い結果になるとしか分析できない人は、おそらく自分がしてきた努力の成果に気がついていないでしょうし、良い結果が出てもなぜそれを生み出せたのかを見つけることができないでしょう。

成長をつくるために大事にしなければいけないこと、目を配らなくてはいけないところを見抜けていないのだと思います。

▽なにが成長を生む本質的な要因なのか

毎年部員の入れ替わりはあってもそれに影響されず、新たなメンバーでも引き継いで積み上げていけるチームは、いったい何を引き継いでいるのだと思いますか?

人が代わればまたゼロになってしまうと思っている人は、とても貴重なものを見逃してしまっています。勿体ないこと、この上ありません。

例えば私がトレーニングにおいてチームで大事にしたい一番のことは、精力的・積極的に向上を目指して自らに負荷を掛けより上のレベルへ挑む意欲、そして行動です。ということはもちろんそれは自発的なものであり、己の意思によって成せるものということになります。

端的な言葉で言うのは難しいですが、コートの中で熱血とか意気込み、気合い気迫、熱気、向上心、負けん気、そんなものどもが表現されているならば、間違いなく成果は上がるしそこにいるすべての人間が今の自分を超えていくことが確実にできます。

私はその空気感をつくりたいと強く思っているし、いつも最大のエネルギーをそこに注いでいます。トレーニングコーチの端くれの私が成果を出す唯一の方法は、当たり前の「頑張る気持ちと行動」づくりにあります。

これは私個人の理想を勝手に申し上げたわけでは勿論なくて、客観的な事実として、これまで長く指導を行ってきてメンバーの入れ替わりに揺るがず力を常に上乗せしていくチームと、同じレベルをずっと続けているチームの違いは、イズムが繋がっているか否かにあることを知りました。

もっと分かり易く言えば、頑張っている様子であったりそれによって生まれる活気、それを代替わりしても続けることが何よりの財産となり宝物となるのです。

つらい練習やトレーニングであっても、力強く挑んでいくならば見えざる意識が熱気となって周囲に広がります。盛り上がっている雰囲気が全体に広がることで、お互いに勇気と元気を分け合って皆がのっていくことでしょう。

▽朱に交われば赤くなる

この東京のバスケットボール部には、新しいチームをつくる上で最も重要な土台「目一杯頑張ること」が備わっていました。

だからそれに引っ張られて新入生も高いレベルでトレーニングをしていたのだと思います。これは本人の実力とは一切関係ありません。ハードルの高さが5であれば5から入るし、もし10にセットしていれば10でやれてしまうのです。

最初にどんなレベルを見せるのか、どのような雰囲気で入るのかということは非常に重要であり、後々の到達点に多大なる影響を及ぼすということを、どうぞ考えてみてください。

「技術力は引き継がれないが、精神と行いは引き継ぐことができる」

これは絶対に覚えておくべき組織づくりの根幹です。

(了)