今の日本の子供たちに、運動する力を自ら磨き伸ばす力を蘇らせよう その2
スキルアップ トレーニング 指導法 梅原 淳 練習法 育成法
この稀代の志高きRealStyleメルマガで最初に考えたい問題はなにか。それは次のことだ。
この拙稿を書いている前日、私は福島県郡山市にいた。
数ヶ月に一度、とある高校男子バスケットボール部にて體づくりの指導をおこなっている。かれこれもう16年以上にもなる。
顧問も学校職員(教師)であるから転勤があるので、いまの方で5人目となる。
なぜかコーチは代わるのに私だけはずっと呼ばれ続け、こうして現在まで長くチームに尽力させてもらえている。
今年新たに転勤で体育の先生がやってきた。
彼は私が初めてこのチームに携わったときの、なんとキャプテンだ。
当時17歳、高校2年生のときに彼と出会い、いまや母校へ戻ってきて教鞭を振るうこととなった。
酸いも甘いもさらに苦いもしょっぱいも、この学校そしてこのチームのすべてを実体験している人間だ。
その教師がこんなようなことを言った。「みんなどうも子供っぽいんですよね」 その感覚を、私はなんとなく理解できる。
▼顧問が代わった狭間でなにが起きる
この5月、日本の高校では夏の全国大会(インターハイ)に向けた、各都道府県の予選がスタートしはじめる。つまりシーズン本番であり、どのチームもここを目指して1年間鍛えてきた。これまででもっとも士気が高まり、また緊張もする時期にある。
そんな「いよいよ」というときに、このバスケ部の戦士たちはどうしてか鎧を脱ぎ捨て、ゆっくり花見でもしているかのようにふんわりとしたのどかさを見せている。
朝のウォーミングアップではトレーニング場の周りをのんびりとジョギングし、トレーニングをしては何も知らない素人がデタラメにやっているかのごとき惨状であった。
問いただすと、どうやら普段はサボっているか、もしくはただメニューを消化するだけでよしとしているようだ。
まあ、聞かなくても見当がつくことだが。これは間違いなく顧問が代わったことによる影響だ。
私はこのような転勤のごたごたを、何度も目にしてきた。
これまで目を光らせてきたコーチがいなくなり、どこか監視が無くなったような感覚になったのだろう。
新しくきた先生が人間関係のできていない段階で、いきなり強くものを言うことはできないから、そのギャップも加わってなおさら気が抜けてしまったのではないだろうか。
私はここで、コーチの指導のあり方を語るつもりは微塵もない。
よく「頭ごなしのスパルタ指導だからそんな選手になるんだ」などという論調が叫ばれるが、このチームでは断じてそのようなことは見受けられないし、他のチームにおいても現実にはほとんどそんなことは確認していない。
▼すべて大人につくってもらう子供
これは子供の生きる姿勢に繋がる問題だ。
先ほど申したように、いまはシーズン真っ只中の一番気持ちの高まっているはずの時期である。
そんなときに、どうして不抜けた様子で、気を抜いてなどいられるだろうか。
しかも来週はもう地区大会があり、それまでわずか10日ほどしかない。
闘志が燃えて意気高揚としているか、不安でしかたないのが本来の心情というものだろう。
誰に決められるものでもなく、それは本人として抱く個人の感性が絶対にあるに違いない。
そう大人は考えるが、じつはいまの子供たちには相応の年頃になっても心の自立がないという現実があるのだ。
自分がどうしたい、自分の道をどう作りたい進みたい、その感覚が非常に薄く、なんでも他人に示されるがまま動き、それがときには成功し、ときに失敗したりするに過ぎない。
スポーツでもコーチが頑張るからそれに連れられていって、おかげでいつの間にか結果が出ていたとか、ある程度の格好はついたということが多々ある。
本人の自覚はないままに、コーチの貢献でできあがった作品だ。
自分で歩いた分の実りではなく、人の頑張りでつくってもらった己の成功ということになる。
それは勉強も部活動も進学も、就職にいたってもそういったケースが本当にある。
子供自身の道を大人が作ってあげているようなものだ。
だからこその、先ほどの「子供っぽいんです」の言葉である。
幼い子供には、大人からべたべたと近づいて声を掛ける。
これで遊ぼうか、こんなおもちゃあるぞ、ほら好きな赤いブーブーが来たよ、子供が楽しんでくれるかなと思うことを大人が汗をかいて探し、振り向かせようとする。
頼んでもいないことを大人が勝手に準備してくれて、その善意にのって子供は楽しく遊ぶ。
それに近い感覚を、このバスケ部新監督は生徒たちから感じたのだ。
さて、大事な本番前の手抜き練習と、先生の「子供っぽい」の言葉とが、こうして見ていくと妙に繋がってくる。
さらにそれが子供の運動能力の未発達とも、どんぴしゃに繋がることになる。
それを次号に考えてみたいと思う。
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