【梅原トレーナーのからだづくり哲学】自分の人生を生きよう
スキルアップ チーム作り トレーニング メンタル(心) 梅原 淳
私たちには皆一人一人に、生まれてから死ぬまでの「我が一生」があります。誰のものでもない、唯一つの自分だけが歩ける物語です。
その物語を誰の真似をするでもなく、後ろからついて行くでもなく、すべて自ら決断して自分の足、自分のペース、自分のかたちで生きていってほしいと思うのです。
あなたの人生にはあなたの意志が必要です。
▽みんなで脱走
じつは先日、練習に出たくないということで、放課後の部活を休んだ選手がいました。
それは個人単位ではなく、ひと学年まとめてのことでした(ただ一人を除き)。皆で結託して、いわゆるボイコットをしたのです。
その日練習に来た別の学年の選手たちも承知しておらず、監督にも何も伝えていなく、当日の練習時間になって「学年ごといない!」ということになりました。
結果その日はわずか5,6人でトレーニングを行うことになってしまいました。
▽赤信号をみんなで渡る
私はこの選手たちを責めるとか、けしからんと言いたいわけではなく、ただどうしてみんなで一緒なのかなと。
十数人いる全員が同じ心情であり、同じ行動を取ろうと個別に考えて、そのタイミングがたまたま重なったのだろうかと、甚だ疑問に思うわけです。
はたして一人で決心しての行動だったのでしょうか。
あとから聞けば案の定、まず数人が言い出し、さらに仲間を募り、盛り上がっていく中でいつしか「全員で」と自らタガをはめることになって、この集団脱走が起こりました。
本当は意見の違う人やあまり考えのない人も含めて皆取り込んで、固まって一つの主張や行動に偏るというありがちな例と言えるでしょう。
とは言え、絶対的なボスが皆を押さえつけて首謀しているみたいなことではありません。言い出しっぺはいるでしょうが、本人も他を従わせているつもりはないでしょう。
取り込まれた人間も同情できる余地はありません。抜け出せない流れがあったとしても、軽はずみに悪巧みへ便乗したことには違いないのですから。
友達同士で口々に不満を吐き出しているうちに話が膨らみ、いつしか皆で決行することになってしまったのかもしれません。
▽きんぎょのふん
なぜ一人一人が自分の考えで決定せず、全体でまとまって動くのか。
自分を消してなんとなく周りの空気や流れに同調することが、どれだけ自らの人生を壊しているか、そこを問題提起したいのです。
この話だけに限らず、集団で固まるという同じような事例は多くはないにせよ他にもあります。
私が関係している範囲においては、とくにこの現代、自ら歩かずに人の後ろへ着いて歩く子供がたくさんいます。大人でも一緒かもしれませんが。
部活動では、何か行動する際に先頭を切って歩く人間がいません。みんな周囲を見渡し他人の行動を見てから動こうとします。
全体的に右に動けば右に行き、左に動けば左へ着いていく。意思なくなんとなく流れに乗っていきます。
どこに行こうとしているのか、なぜ右へ行くのか、自分もそれと同じで本当に正しいのかをまるで気にせずして、唯々人の後ろをくっついていくのです。
とにかく全体からはみ出さないようにと。
▽意思なき同調
日本人は自分よりも全体に合わせる傾向が強いと思います。とくに大事な問題ほど、輪になり全体に紛れようとします。自分を消して外の意見や方向性に合わせようとするのです。
だからTVや新聞、ネット、雑誌などからの情報が精査されずに安直に広がりやすく、考え方や捉え方、ものの見方の単一な方向付けが出来上がってしまうのです。
自分でよく調べて判断することをせず、流れが見えるとそれに乗ってしまい、簡単に正しい情報だと思い込みます。
それは大きく見れば、日本の現代教育に原因があり、とくに戦後の歴史観の過ちと偏りが強く響いていると私は考えます。
一方向に思い込まされる、自分の考えを持つことを取り上げられるというのは、大変に苦しいことです。
▽教育の価値
話を最初の集団ボイコットに戻しましょう。
たった今の日本の子どもたちは、一人で歩くことができません。仲間と違う行動を取ることができず、個で物事を考え独自の判断を持っていません。
合わせるとか、同じとか、流れに乗る、それが彼らの日常にあります。いや、やっぱり大人も同じですね。日本全般に言えることでしょう。
ボイコット計画のときに、一人が「自分は練習に出るよ」ともし言ったら、その人は後に仲間はずれにされるのですか?
よほど性格の歪んだ人間でもない限り、実際はそうなりません。ちょっと言われたとしても、所詮は負け惜しみやイヤミです。人に疎まれることは何もしていないのですから、堂々としていれば直にそんな小言も無くなるでしょう。
その程度のものなのに、みんなと違う行動を取ることをためらってしまうのは、己の根っこがないからだと思います。力強く支える足があれば、たとえ少数派でも揺るがずその場にしっかり立っていられるはずです。
やはり解決の糸口は教育にあると考えます。大人も勿論教育が必要ですが、子供のときの教育とくに小学生以下の歳を大切に考えてあげるべきです。もしかしたら私たち大人が、この子供の全体へ紛れる習性を作っているのかもしれません。
ぜひ社会全体で関わり、自らの頭で考え自らの足で行動する人間を育てていきませんか。
(了)
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