【番外編】復権に向けて取り組むリトアニア代表チームのディフェンスより

スキルアップ ディフェンス戦術 片岡 秀一

今回は番外編として、リトアニア代表チームの国際ゲームより、過去の記事と同様にローポストの攻防を扱いたいと思います。

同チームは、バスケ界に君臨する超強豪国の一つです。
近年も、世界でトップクラスの実力を保っていると感じていますが、19年ワールドカップでのフランス、オーストラリアに接戦で敗戦後、国際大会では上位に進出していません。
オリンピック予選でも、スロベニア代表チームに決勝戦で敗戦しました。

今回の試合は、2022年9月に開催されるFIBAユーロの予選リーグとなります。

1.プレーの構図

2.プレーの流れ

チェコ代表がオフェンス、リトアニア代表がディフェンスの場面です。

左サイドのオンボールスクリーンで、ディフェンスX1とX5がスイッチをします。
しかし、インサイドを狙わずに逆サイドにパスをします。
逆サイドにアングルを変えてインサイドを狙おうとする意図も見えますが、元々のオフボールスクリーンの動きも継続しています。
その後1が指示を出し、サイズのミスマッチであるマッチアップを突くことをチェコ代表は狙います。意図的にボールを左サイドへ戻しました。

このボールを回した意図は、ミスマッチの局面を突くことです。

ボールサイド(左サイド)のコーナーにいた3は、逆サイドへクリアーしてスペースを確保しました。
ミスマッチであるローポストに、ボールを供給する準備が整いました。

ここでX3はコーナーへ行かず、ローポストのダブルチームに間に合う位置でとどまります。
それに合わせてX4もポジションと視野を保ちます。コーナーとトップ方向へのパス両方に反応できるポジションを取ります。

オフェンスは4がカッティングをしてポジションが入れ替わりますが、これにX2が対応します。
ここで、5はベースラインにドリブルでアタックを試みますが、ダブルチームのプレッシャーを浴びます。
オフェンスは、ここを切り抜ければ数的優位になっているはずですが、プレッシャーに苦しみパスコースが決して多くありません。
2へのパスを狙うもx4が反応し、見事にスティールからファーストブレイクへと繋がりました。

3.まとめ

刻一刻と変化する状況に対応し、

  • ポストのダブルチームをする選手
  • その次のスペースを埋める選手

とで、即座に連携を取れたことがディフェンスの成功の要因といえるでしょう。
また、ボールマンを苦しめることで、パスの判断を見誤らせることにも成功しました。

同チームは、FIBAユーロの予選でも出場権を獲得するために苦しんだ背景があります。

それだけ欧州の他国の強化が進み、強豪国と中堅国との差が少なくなってきているともいえるでしょう。

一敗を喫していたデンマークとの試合では、最後の場面でのブロックで勝利を確定に。薄氷の勝利を掴み、出場権を獲得しています。

同チームがFIBAユーロを逃すのは、30年近い歴史で一度もないことです。

終盤戦を迎える前には特集記事も数多く登場しました。リトアニア選手の力強い発言が並び、国の持つプライドや誇りが垣間見えます。

本ポゼッションの規律や溌溂さには、リトアニア選手の持つプライドも強く感じさせてくれる内容でした。いくつかを紹介し、本稿を終了します。

“In every tournament you play, you know that every single defeat can cost you dearly. The veterans of the national team are accustomed to this kind of pressure. You just know you must win, especially in a situation like this.”

“どの大会でも、一度の敗北が大きな損失を生むことは分かっているはずだ。リトアニア代表のベテラン選手たちは、こうしたプレッシャーに慣れている。特にこのような状況下では、勝たなければならないと分かっているはずだ。

“We came here to finish the job we didn’t finish in the previous windows,” he said. “We need to get a feel for each other as much as possible in the next few days and win the game, of course.”

「前のウィンドウ(予選の試合日)でやり残したことをやり遂げるために、ここに来たんだ。これからの数日間で、できるだけお互いの感触を確かめ、もちろん試合には勝たなければならない」

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この記事を書いた人片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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